「一番くじ ドラゴンボール EXシリーズ」は、TVアニメ「ドラゴンボールZ」のキャラクターたちが精緻な造形でフィギュア化され放映当時の興奮が蘇ると大人気。
今回は「ベジータ」や「ナッパ」という敵サイドのキャラクターが登場。
さらに、「孫悟空」も3倍界王拳バージョンでラインナップされた。
シリーズ最新弾である「一番くじ ドラゴンボール EX 天下分け目の超決戦!!」の発売を記念し、A、B、C、D、E、ラストワン賞のフィギュア制作を担当した原型師「VAROQ氏」「髙松正慎氏」「荒木秀造氏」の3名と、開発担当を務めるR平氏( BANDAI SPIRITS )に、制作時のこだわりなどをお聞きした。
R平:A賞ベジータの制作上のエピソードをお聞きします。私からは「当時の雰囲気や曲線感を出したい」というリクエストを出していたので、そのあたりの苦労とかこだわりのポイントなどはありますか?
VAROQ:「ドラゴンボール」シリーズのフィギュア制作回数は多いのですが、フリーザ編以降のものが多いので、初期とは筋肉の付きかたや顔のフォルム、服のシワまで違うんですよ。ですから、丸みのある当時のシルエットで制作するというのが、とても新鮮でした。
ブーツなども、上の部分からつま先に向かって逆三角形になっていて、制作中も当時のベジータを追究するにあたっての新しい発見がいくつもありました。
R平:ベジータは、髪の毛のニュアンスもかなり違いますよね。最近の超サイヤ人ブルーだとバキバキにとんがっていますし。
VAROQ:はい。そこで髪のスジ彫りなども最低限にして表現しました。いい意味で野暮ったいのが、初期ベジータの特徴なので、立ちポーズもスマートなS字立ちではなく、仁王立ちに近い感じにしています。
R平:今回、ベジータとナッパを依頼する時にスカウターの有無で悩み、2バージョンにするよりはお客さんに楽しんでもらえるよう着脱仕様という依頼になったのですが、苦労しましたか?
VAROQ:製品になったとき「耳の分割線がどうなるのか?」という不安でしたが、正面から見る限りは気になりませんね。
また、スカウターの造形は髙松さんと互いの原型画像のみの確認だったのですが、ベジータとナッパのスカウターは全く同じ形状ではなく、それぞれの解釈で良い感じにまとめられ、良かったなと思っています。
髙松:ナッパで言えば、今回の左腕を内転させたポーズだと、人体構造上正面から上腕二頭筋の膨らみは見えにくくなるのですが、当時のイメージに合わせて二頭筋が上面にくるように造形しています。最近のドラゴンボールフィギュアだと二頭筋と三頭筋の間にある上腕筋まで作るのですが、今回は二頭筋と三頭筋が隣接するくらいの感じにしています。
同じように、後ろに引いた腕も上腕筋は作っていないのですが、完成品を見ると立体物として違和感がなくまとまりました。
ほかにも太ももの部分は、敢えて情報量を抑えて当時の雰囲気を出しています。最近のフィギュアの作り方と意図的に変えた部分が多かったのですが、新たな発見を沢山することができましたね!
R平:筋肉という視点は面白いですね!
髙松:こだわり部分としては、ナッパにはどっしりとした重量感を出したいと思いました。しかし、前傾にするとバランスがとれないので、敢えて上半身を後ろに倒したり、首の位置も逆サイドにしてみたりしました。これは、本当の人間ではありえない筋肉の角度になるのですが、うまくまとめることができました。
R平:ラストワン賞用のナッパはいがかですか?ボーナスパーツとしてテレビスペシャル版の「ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜」に出ていた時のナッパをイメージして、髪を依頼させていただきましたが。
髙松:ラストワン賞の髪の毛は「本当に作っていいの?」と思うくらい喜んでしまいました(笑)苦労したのはポージングで、ラストワン賞の突き出した腕は手を開いているんです。そのため一歩間違えると「ちょっと待ってくれ」みたいなポーズに見えかねないので、きちんと戦闘ポーズに見えるよう注意しました。
R平:栽培マンはいかがでしょう?
髙松:栽培マンを作れる機会なんて今後あるかわかりませんので、楽しくて一気に作ってしまいました(笑)ただ、頭と腕を一軸で動かすので、実際に動かして違和感のないように作るのが大変でしたね。
荒木:顔の造形が似ないと始まらないので、制作途中の写真を撮影し、画像処理で孫悟空の顔をトレースして調整するなど試行錯誤しています。
正面もそうですが、元になったシーンの再現を意識して斜め45度から見た頬の輪郭などが似るように苦労しました。
目の両サイドの奥行きをどうするかとか、微調整を繰り返しましたね。あとは初期のフォルムとして、顔の輪郭が少し電球っぽいシルエットになるように注意しています。
R平:3倍界王拳だと筋肉の表現が大変ですよね?
荒木:実は髙松さんから、筋肉の話も聞いていたので、上腕筋は作っていません(笑) ですが、3倍界王拳を実際に映像で確認すると三角筋が凄く長いなど、筋肉の構造にかなりディフォルメが利いていますので、どこまで作っていいのかわからずに怖かったですね。
動いているとカッコイイけど、立体物になっても大丈夫か自信がなくなってしまい、一度2倍界王拳くらいの筋肉量で提出しました。
R平:そこで私から「3倍界王拳なら、もっと思いきってやってください! ! 」と(笑)
荒木:その言葉でとても気が楽になりました。破綻を恐れず、一段突破しないと3倍界王拳らしさが出ないんですよね。そこで、夜中に「3倍だ~」と言って腕の筋肉とかを一度バキバキに壊しながら継ぎ足しをして、今のフォルムが完成しました。また、この時代の雰囲気を壊さないように、筋肉のエッジを立たせないように、丸みを帯びた造りにしています。
R平:いろいろ注文をしてしまいましたが、完成品は、当時私が欲しかった孫悟空(3倍界王拳)そのものです!
当時の悪役の場合、目の下にあるしわがカーブして下がっていくのが特徴です
VAROQ:ベジータは「ドラゴンボールZ」から物語終盤まで登場するキャラクターなので、登場時と現在で身体のバランスが、かなり違います。
顔なども、初期登場時のアイラインの丸みとか黒目の大きさとかが違うんですよ。特に、当時の悪役の場合、目の下にあるしわがカーブして下がっていくのが特徴です。ですから、そこを見てほしいですね。
R平:最近のスーパーサイヤ人ブルーなどのフィギュアと見比べても面白いですよね。
VAROQ:あとは、頬が斜めから見ると尖って見えるのがポイントです。ただ、これをやり過ぎると正面から見た時の印象が破綻するので、かなりギリギリまで攻めて作りました。
その圧倒的なパワーと絶望感を感じられると思います
髙松:ナッパはズッシリとしたボリューム感があるので、ぜひ手に取って頂きたいです。これまでのZ戦士と並べてみると、その圧倒的なパワーと絶望感を感じられると思います。
アーマーは、胸から肩までガバッと取れるように原型の分割方法も工夫しています。(注:製品では接着)
あとは、戦闘服や装備品が伸縮素材だというのがわかるように、筋肉で引っ張られてテンションがかかる部分は、きちんとしわが入るように表現しました。
R平:このサイズの栽培マンも珍しいと思うのですが、何か工夫された点などは?
頭が開いて溶解液を出してもおかしくない雰囲気をだしました。
髙松:栽培マンの原型を作る際に、頭部のパーツを左右別につくり、頭が開いて溶解液を出してもおかしくない雰囲気をだしました。
R平:荒木さんの孫悟飯は、前回の「一番くじ ドラゴンボール STRONG CHAINS!!」は平和的な雰囲気で、今回は臨戦態勢な感じですよね?
ピッコロに鍛えられてたくましくなったんだ
荒木:悟飯は、「ピッコロに鍛えられてたくましくなったんだ」ということを表現するために、2弾のかわいらしい悟飯よりも腕を若干筋肉質にするなどの工夫をしています。
もし、前のバージョンをお持ちでしたら、ぜひ比べて見てほしいですね。
R平:悟空の髪型は通常の逆向きなのも特徴ですよね?
通常の髪は右側に流れていて、それが反転して左側になっています。
荒木:はい。通常の髪は右側に流れていて、それが反転して左側になっています。例えば、これを通常の方向にしようとすると、目線と髪が逆になるので凄く違和感が出るんですよ。
有名なシーンなので違和感はありませんが、通常の孫悟空のフィギュアの髪と見比べてみても面白いかもしれませんね。